開館20周年記念展 ― 印傳の更紗・受け継がれた技 ―
「更紗」は近世初めにインド・ジャワ・タイ・ペルシャ等からもたらされた木綿の模様染の総称で、「紗羅紗」「皿紗」「佐良佐」「華布」「印華布」等とも記されています。手描きや型染めによって物語・人物・鳥獣・草花等が色使い豊かに描かれ、大名や富裕層に好まれました。江戸後期には「和更紗」が作られ、日本独特の更紗が生まれ、広く知られるようになりました。
印傳の更紗は、鹿革に華やかな色彩を施す技法です。起源は明らかではありませんが異国風な模様染を鹿革に応用したものと考えられています。製法は、地色に染めて裁断した革を、高低差や型紙とのずれを防ぎながら更紗台に並べ、型紙を用いて顔料をのせます。色には単色と多色があり、多色の場合、色が多いほど型紙を替える回数も多く、色彩豊かな模様となります。小さなずれでも仕上がりを大きく左右する為、職人は細心の注意を払い、力の加減を調節して色を重ねていきます。地色となる革の色との組み合わせや漆付け技法との併用により色彩は更に多様化します。印傳屋では昭和30年~50年頃まで更紗技法による製品作りが盛んに行われました。昭和30年代以前は天然染料が用いられていましたが、色落ちの改善や発色の研究が進み、顔料を使用するようになりました。
更紗は日本に入り、長い歴史の中で変容を遂げながら鹿革工芸品や印傳にも影響を与えてきました。受け継がれた技によって創られた様々な用途の資料をお楽しみください。
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