甲州印傳の模様付けは主に「燻技法」「漆付け技法」「更紗技法」の技法があり、それぞれの工程で型紙を使用しています。「燻技法」は藁の煙によって鹿革に茶褐色系の色と模様を施す技法です。縞模様以外は型紙の上から糊を置き、防染します。燻した後に糊を剥がすと、白い模様として浮き出ます。「漆付け技法」では型紙を木枠に貼ります。革の上から型紙を重ね、ヘラで漆を刷り込むようにのせると漆の模様が表れます。「更紗技法」は模様の色ごとに型紙を替え、鹿革に多色の模様を施す技法で、模様の色が多くなるにつれ型紙の枚数も増加します。目印を定め、キリで型紙を固定し、ヘラや刷毛で顔料をのせます。革の乾きを見計らいながら他の色の型紙に替えるという作業を繰り返し、鮮やかな色と模様を生み出します。
印傳の型紙はやや大型で「伊勢型紙」で知られる三重県鈴鹿市白子町に特別注文して、入手しています。元となる紙は、繊維が多いとされる美濃和紙を柿渋で重ねる作業を行い、型地紙を作ります。彫り方には「突彫り」「錐彫り」「引彫り」「道具彫り」の四種類があり、職人の熟練した技と根気によって、一枚の型地紙から精緻な模様が誕生します。
印傳屋は甲州街道沿いに暖簾を掲げて現在に至ります。江戸時代、染物用の型紙を持ち、街道を往来する行商人との交流から鹿革に型紙を用いた模様付けを考案したと言われています。甲州印傳の独特な風合いと、江戸小紋をはじめとする多くの模様は道具である伊勢型紙に大きく支えられてきました。型紙職人の減少により貴重な資料となりつつある印傳の型紙とその道具をご覧ください。
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