物を収納し、持ち運ぶという行動は古くから見られ、袋物は革・紙・布など様々な素材を用いて作られてきました。 日本では古事記の「因幡の白兎」の物語に大国主命(おおくにぬしのみこと)が袋を背に負う様子が表されています。鎌倉時代には武具などを納める袋や上刺袋(うわさしぶくろ)が作られ、室町時代になると「包む」という実用と美を兼ねた茶袋などが生まれました。江戸時代に入ると袋物屋も登場し、生業(なりわい)として成立していたことがうかがえます。さらに明治時代になると洋装化に伴い、オペラバッグなどが流行し、袋物の文化に新たな傾向を与えたようです。 印傳の袋物は、軽くて丈夫で加工がし易い鹿革の特徴を活かして作られました。口を括る紐の位置や形、そして・担ぐ・掛ける・提げる・懐や袂に入れるなどの使用目的によってその形状は多様化しています。襞(ひだ)の出し方によって美しい形を見せる「百襞」(ひゃくひだ)の巾着は、職人の高い技術により、装飾にも工夫が凝らされていることの好例です。袋物の変化と発達は、鹿革工芸の文化に大きな役割を果たしたといえましょう。 今回は巾着・合切袋・信玄袋をはじめ、古典作の中から各種の袋物を陳列しています。様々な形をお楽しみいただくと共に、袋物の意匠(いしょう)にもご注目下さい。
【印傳の袋物 —囊― 平成29年9月16日(土)~平成29年12月3日(日)】
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