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ポール・ラッシュ記念館

ポール・ラッシュ博士の理想と実践の継承

登録日:2012/06/01 17:00:07

6月2日、エリザベス女王、戴冠60周年に際して

カテゴリ 歴史   文化   芸術  

ポール・ラッシュ記念センターでは、来る7月5日より、企画展『素顔のポール・ラッシュ』第2期「人脈」を開催いたします。

ポール・ラッシュ博士の人脈は多岐に渡ります。今回は、その人脈に関連して、ラッシュ博士からの贈り物がエリザベス女王の戴冠式に使用されたというエピソードをご紹介します。

昭和23(1948)年、英国政府から招請され、日本聖公会の三主教が、ロンドンで開催されるランベス会議(英国聖公会のカンタベリー大主教宅であるランベス宮殿で、10年ごとに開かれる全世界の聖公会主教が集まる宗教会議)に列席することになりました。それに先駆け、ラッシュ博士は、三主教を連れ、天皇皇后両陛下に拝謁し、英国王室へのメッセージを受け送り出しました。その際に、ラッシュ博士は、カンタベリー大主教への贈り物を三主教に託します。

その贈り物は、京都・西陣で皇室御用達を務める織物業者に、日本の伝統技術の粋を集め、英国の伝統様式に則って作らせたコープとマイター(法衣と主教冠)でした。白地に薔薇の文様を縫い取ったコープは、壮麗で美しく、カンタベリー大主教をとても喜ばせたということです。

5年後の昭和28(1953)年6月2日、カンタベリー大主教はこのコープとマイターをエリザベス2世の戴冠式という世界的にも大きな晴れの舞台で着用します。戴冠式に列席していた今上天皇(当時、皇太子殿下)も、日本製の法衣をまとったカンタベリー大主教をご覧になりました。戦後日本の復興を、織物という文化を通して、歴史的な式典で世界に発信できた日でした。

このコープとマイターは、その後も英国で大切に使用され、昭和62(1987)年に日本聖公会組織成立100年の記念年に日本に里帰りし、池袋東武百貨店の『英国カンタベリー展』で展示されました。現在もランベス宮殿に大事に保存されているそうです。

ポール・ラッシュ記念センターでは、7月5日から開催される企画展に、60年前の戴冠式でのカンタベリー大主教の写真を数点展示いたします。壮麗な式典と、ラッシュ博士が贈ったコープとマイターの様子を伝える貴重な写真をご覧ください。

皆さまのご来館を心よりお待ち申し上げます。

 

参考文献:井尻俊之著『清里の父 ポール・ラッシュ伝(第3版)』山梨日日新聞,2004年

 

                                報告者:ポール・ラッシュ記念センター
                                                学芸員 秦