企画・協力:都留文科大学国文学科 近世文学研究室(近世ゼミ)
『硯澤(すずりさわ)』という作品をご存じでしょうか。山梨県出身の山口黒露(やまぐちこくろ)という俳人の書いた作品です。自身の東北旅行を書いた紀行文で、一般的な知名度は低い作品ですが、松尾芭蕉の『おくのほそ道』を辿った珍しい俳書となっています。芭蕉と類似のルートを辿りながら、芭蕉とは一味違った感性と表現を見ることができ、また当時の東北地方の様相を知るうえで貴重な資料ともなっています。
この文学的・歴史的に価値の高い作品を後世に伝えていくにあたって、より正確な形で作品を残したい、というのが本企画の発端です。作品の研究を進めていくためにも、正確な本文の制作は必要不可欠となります。そこで都留文科大学の国文学科近世ゼミの研究会では、『硯澤』の原本をすべてコピーし、現在ある活字本の本文と一文字一文字照合しながら間違いがないかを確認していく、という大変地道な作業によって『硯澤』の新たな本文を作成しました。
今回の展示では、旅の様子や見どころを伝えるための写真・画像も多く使用し、この作品を知らない方にも楽しんでいただけるような展示を目指しました。私たちの住む山梨県で面白い活動を展開した俳人がいたこと、こういった文化があったことを知ることは地域に住む者として、とても重要なことだと思います。この展示がそのためのひとつの機会となり、より多くの方が興味を持つきっかけとなればと思います。 (都留文科大学 近世ゼミ一同)
会員登録がお済みのお方はログインをしてからコメントを投稿してください。