「甲斐(かい)絹(き)」は都留市を中心に江戸時代から明治・大正を経て、戦後まで生産されていた絹織物で、おもに着物の裏地に使用されていました。その歴史を見ると「甲斐絹」は「織(おり)色(いろ)郡内(ぐんない)」という織物と戦国時代、南蛮(なんばん)貿易時、更紗(さらさ)などの織物と一緒に海外から輸入した「海気(かいき)」という織物の流れを汲んでいます。「織色郡内」とは江戸時代、郡内地域で織られ、とくに甲州郡内谷村辺りから出るものが上品といわれ、江戸の町では「郡内(ぐんない)縞(しま)」と呼ばれるなど、織物産地の中心的存在であった京都にもまして、江戸庶民の好みに合い、広く人気があった着物の一種です。
一方、「海気」という織物は「しま=縞」という種類のもので、オランダやベンガル地方(インド方面)から伝来したとされます。他の島から渡ってきたという意味を込め「島物(しまもの)」、「島渡(しまわた)り」などとも表現されました。
「甲斐絹」という表記は、明治時代の山梨県初代県令(当時の知事)の藤村(ふじむら)紫(し)朗(ろう)が郡内地方の特産品にするため、山梨の「甲斐」にちなんで「甲斐絹」としたのがはじまりとされます。明治6(1873)年にはオーストリアの首都、ウィーンで開かれた万国博覧会へ「甲斐絹」を出品し、進歩賞に入賞するなど世界的にも評価され、「甲斐絹」は近代以降、都留市のみならず、広く山梨県の経済発展に大きな影響を与え、その後も「甲州織」に形を変え、地域経済発展の基盤を成していきました。また「郡内(ぐんない)縞(しま)」やその後の「甲斐絹」は井原(いはら)西鶴(さいかく)や夏目漱(なつめそう)石(せき)などの近世・近代文学を代表する作品に登場するなど、国内の文学作品にも影響を与えてきました。
本特別展ではこうした「甲斐絹」について江戸期の「郡内縞」(第1章)、明治~昭和期の「甲斐絹」
(第2章)、昭和期以降の「甲州織」(第3章)の項目に分け、それぞれを「歴史の道」、「流通の道」、「文化・生活の道」という3つのテーマに絡めてご紹介します。甲斐絹と歩んだ都留の歴史と文化を、どうぞお楽しみください。
関連イベント
①オープニングセレモニー
日時 9月22日(日)10:00~
場所 エントランスホール
内容「『ボランティアサークルひびきの会』朗読会」10:00~
「都留の機織り唄演奏会」11:00~
②講演会
第1回
日時 9月28日(土)14:00~
場所 研修室
内容 「海黄の流通」
講師 小笠原小枝先生(日本女子大学名誉教授・東京国立博物館客員研究員)
第2回
日時 10月5日(土)14:00~
場所 研修室
内容 「ヤマナシ織物産地と『甲斐絹』」
講師 五十嵐哲也氏(山梨県富士工業技術センター繊維部主任研究員)
第3回
日時 10月12日(土)14:00~
場所 研修室
内容「郡内縞と文学」
講師 山口恭子先生(都留文科大学非常勤講師)
③絹の道「近ヶ坂往還」を歩く
日時 10月6日(日)8:30ミュージアム都留集合、15:00解散(雨天中止)
講師 堀内亨先生(山梨県立ひばりが丘高等学校教諭)
注意事項等 対象:体力に自信のある方、定員:40名 要申込、
持ち物:飲み物、雨具、タオル、お弁当、保険料100円
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